『13デイズ』

13デイズ』(原題 : Thirteen Days) (ロジャー・ドナルドソン監督、2000年)

 

13デイズ(字幕版)

13デイズ(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: Prime Video
 

 

・1962年に起きた「キューバ危機」を、ホワイトハウス、特に大統領とその補佐官そして司法長官からの視点でその始まりから終わりまで描いた映画。


 以前にこの作品をオススメしているTweetを見かけ、その後しばらくしてからAmazon Prime Videoのラインナップに追加されていることを知り、ようやく視聴することができました。

 

 映画の感想ですが、政治的なテーマを取り扱っている割には最低限の知識さえあれば娯楽映画としても楽しむことができ、しかしながらキューバ危機という事件そのものを詳しく知ろうとする人の入門にも適した内容になっていると感じました。

 


 全編を通して大統領補佐官のケネス・オドネルと、当時の大統領ジョン・F・ケネディ、そしてケネディの弟であり司法長官のロバート・ケネディ、以上の三名からの視点で描かれているため、視聴者は神の視点からではなく、米国側の視点から事態の展開を見守ることとなり、果たしてソ連側がどのような腹積もりで次の行動を打ってくるかが分からないという緊張感に包まれます。

 

 計画の立案をめぐる駆け引きについて、強硬な主張を続ける制服組と、それに対立する主人公サイドという構図が基本的な形をつくり、それがこの映画を非常に分かりやすく、且つ大統領というキャラクターの苦悩を伝わりやすくする役割を担っています (制服組の描き方に、ある程度の誇張はあるだろうが) 。その裏では、起こるかもしれない有事に備えて演習を装い軍隊を移動したりするなど行政的な対応がとられる様も描かれており、この事態には期限があって、刻々とホワイトハウスの外でも状況が動いていることも示されます。

 


 ひとえに国家の決断といっても、その裏では様々なアクターが動いている事実があり、そこがこの映画の最も丁寧に描いているところで、自分が最も惹きつけられた所でした。

 

 同じ平和的解決を目指す仲間であっても「ソ連側の譲歩の引き換えにトルコからのミサイル撤去」という案をめぐっては対立をしたり、海上封鎖 (ソ連を刺激しないよう海上"臨検"と呼ばれていた) の実施段階では現場の不手際が発生したりもする。それぞれの主張がぶつかり、採用した計画も必ず成功するとは限らないなかで、それでも決断をくださなくてはいけない大統領の姿を視聴者は目にします。
 

 

 この映画の視聴中、同じアメリカ映画の『大統領の陰謀』を思い出したのは、ウォーターゲート事件の真相にまつわる情報が果たして確実なものか、何度も裏を取りながら慎重に取材を続ける主人公の姿が、キューバ危機に如何にして対処すべきか冷静に対応しようとするケネディ大統領の姿と被ったからかもしれません。とにかく一歩間違えれば核戦争に突入するという極限状態で可能な限り平和的な解決を目指そうとする様子がこの映画の肝であり、自分にとっては今後アメリカ政治を学んでいくうえでの最大の収穫になったと思います。

 

大統領の陰謀 (字幕版)

大統領の陰謀 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 


 視聴中はそこまで肩ひじ張らず、国際関係論で習った確証破壊戦略はこれの影響受けてるよなーとか、あと、そういやケネディこのあと暗殺されるんだよねとか、そんなことをポヤポヤ考えながら観てました。名前は知ってたけどケビン・コスナーってこの人か、みたいな。

 

 それから、この映画を観た後に読む本としては『超大国回転木馬 米ソ核交渉の6000日』なんか面白そうだなと思っているので (Twitterで小泉悠氏がオススメしていた) 、そういったことも含めて今後のアメリカ政治の学習のはずみとして非常に有効な映画鑑賞になったなと大変満足でした。

 

 

 余談ですが、国連大使のアドレイ。何気にこの映画では一番おいしい描かれ方のされている登場人物ですよね。パーティー中に自虐するシーンもいいですが、やっぱり「Yes or No」でソ連大使を追い詰めるシーンが高校野球で弱小校が強豪校を倒すのを応援してる感じでめちゃくちゃ興奮しました。でも今思うと山下奉文っぽいですね。

 

 あと映画のラストで大統領が"とあるアメリカ国民"に電話をかけるシーンは、かなり『プライベートライアン』の冒頭っぽいと思ったのですが、ああいうシーンがアメリカではグッと来るお決まりのシーンのようになっているんでしょうか。そこは少し気になりました。